奈良の昔話

9月23日(日)               
おふじの井戸

むかし、奈良がまだおお柳生村と呼ばれていたころのお話です。
柳生の殿さまは、よく馬で、あたりの村や野山をかけめぐられました。
ある日、遠乗りにでかけられた殿さまは、村をとおりかかりました。
すると村の井戸では、娘が一人洗濯をしています。殿さまは、近づいて娘に声をかけますと、
娘は振り向きました。なんと娘は美しい顔だちをしています。殿さまも、
                                     
娘におもわず名前を聞きました。娘は、恥ずかしそうにうつむくと、小さい声で、
「ふじ」と、答えました。娘の答えた姿が、又、可愛いらしいのです。
殿さまは、ますます図にのって問いかけました。
「これ、おふじ、洗濯の桶の水がゆれておるが、その波の数はいくつあるのか、答えてみよ。」
                            なみ  にじゅういっぱ
と、たずねました。おふじも、殿さまの心が分ったのか、「七三は二十一波でございます」
と、きっぱりと答えました。殿さまは、おどろいて娘を見つめていますと、こんどは
おふじがすかさず殿さまに問いかけました。「お殿さま、柳生の里からこの村まで、
馬の足あとはいくつになりますか。」お殿さまは、びっくり、「む・・・むむ」
こんどは、殿さまの方が、頬をそめてうつむいてしまいました。むすめの目は、
お殿さまだからと言って、あまりむちゃをおっしゃるものではありませんよと、いさめていました。
さすがの剣の達人、柳生のお殿さまも、おふじに負かされてしまいました。
殿さまは、娘の知恵のよさを誉められて、その後、おふじをお嫁さんにされたと言うことです。
終わり。