日本の民話・京の昔

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10月15日(日)               
             京の昔話
三十三間堂・棟木(むなき)のおはなし

昔むかし、三浦半太郎吉勝という男が紀伊国の近くを通りかかった時のこと。
殿様の鷹が足の綱を柳の枝にからませてとれなくなり、
まわりの人々は「いっそこの木を切ってしもぅたらどうか」と騒ぎ始めました。
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立派な木を切られるのをかわいそうに思った吉勝は、狙いをさだめて
ひゅうっと矢を放ったところ、矢はみごとに鷹の足の綱を射きり、
鷹は無事に殿様の腕に飛び戻ってきました。
しばらくたったある晩、吉勝のもとに美しい女性がやってきました。
いつしか二人は夫婦となって、元気な男の子も生まれ、
毎日幸せに過ごすようになりました。
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ある夜、妻は「実は、私はあなたに助けられた柳の木です。
ご恩を返すためにお側においてもらいましたが、京の東山に建てられる
お寺の棟木に、私が使われることになったので、もう行かねばなりません。
どうかこの子をお願いします」と言い残して、姿を消してしまいました。
吉勝は、突然の出来事に何が何やらわからなくなり、
そして妻の言った通り、あの柳の木が切られ、
都に運ばれようとしたその時、不思議な事が起きました。
大勢の人が力いっばい押しても引いても、木はびくともしません。
その話を聞いた吉勝は、子供を連れて熊野へとかけつけ、
切られた柳の木に手を置いて、なにやら優しく声をかけました。
するとどうでしょう。ぴくりともしなかった大木は、
まるで枯れ枝のようにするりと動き始めました。
柳の木は無事に京へと運ばれて、
東山の三十三間堂という立派なお寺が完成しました。
その後、吉勝は僧となってこのお寺の住職になり
棟木となった柳の木のために、熱心に供養を続けたと伝えられています。
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●三十三間堂
 
長寛2年(1164)創建。後白河法王が平清盛に命じて創建したが、
 一度焼失し 現在の建物は文永三年(1266)に後嵯峨天皇が再建した。
 正式名は蓮華王院(れんげおういん)