10月25日 |
法 螺 吹 き 童 児 |
むかし、むかしのお話です。 |
江戸一ばんの法螺吹きが、越後(新潟県)一番の法螺吹きのところへ、 |
法螺吹きくらべにやって来ました。ところが、折りわるく、その時はちょうど、 |
越後いちばんの法螺吹きは留守でした。そこで江戸一番の法螺吹きは、 |
「ちゃん(お父さん)おらんか。」と聞きますと、子供はさっそく、 |
「あの、家のちゃんは、この前の風で弥彦山が、かしがったんで、うがら(芋殻) |
三本持って突つかい棒がいに行った。」というのです。江戸の法螺吹きは |
「こいつは、子供のくせに、なかなかやるわい。」と思いながら、 |
「そんじゃあ、母ちゃんはどこへいったよ。」と、たずねますと、 |
「 母さはな、天竺が破れたんで、虱の皮三枚持ってつぎに行かした。」 |
「そうかい、そいつはごうぎだ。」 |
江戸の法螺吹きは、こんどは子供を、へこましてやろうとおもって、 |
「実はな、このあいだの風で、奈良の大仏さまの釣り鐘が、このへんへ |
飛んで来たはずだがお前、知らんかい」と、やってみました。すると子供は平気な顔をして、 |
「ああ、あの鐘か・・・。そんならおれんちの裏の蜘蛛の巣に、ひっかかつてらあ。」 |
これにはさすがの、江戸一番の法螺吹きもびっくりして、 |
「ウウン・・・。子供ですら、こんな調子じゃあ、親はさぞかし、 |
とんだ法螺吹きに、ちげえねえ。」と思って、さっさつと、 |
逃げるようにして、帰って行ってしまったとさ。 |