日本の民話・笑い話
                                                                                                    
       
11月25日
茗  荷  宿
むかし、あるところに、大変欲の深い宿屋がありました。
   ある時のこと、この宿屋へ、大金を持った旅人が泊まりましたので、
   宿屋の女房はそのお金を何とかして手に入れたいものだと思ったのです。
   そこで、いろいろと頭をひねって、考えたあげくに、フトいい考えが浮かびました
   「あの、家のちゃんは、この前の風で弥彦山が、かしがったんで、うがら(芋殻)
   三本持って突つかい棒がいに行った。というのです。江戸の法螺吹きは
   「こいつは、子供のくせに、なかなかやるわい。」と思いながら、
   「そんじゃあ、母ちゃんはどこへいったよ。」と、たずねますと、
  「 母さはな、天竺が破れたんで、虱の皮三枚持ってつぎに行かした。」
   「そうかい、そいつはごうぎだ。」
   江戸の法螺吹きは、こんどは子供を、へこましてやろうとおもって、
   「実はな、このあいだの風で、奈良の大仏さまの釣り鐘が、このへんへ
飛んで来たはずだがお前、知らんかい」と、やってみました。すると子供は平気な顔をして、
「ああ、あの鐘か・・・。そんならおれんちの裏の蜘蛛の巣に、ひっかかつてらあ。」
   これにはさすがの、江戸一番の法螺吹きもびっくりして、
   「ウウン・・・。子供ですら、こんな調子じゃあ、親はさぞかし、
   とんだ法螺吹きに、ちげえねえ。」と思って、さっさつと、
   逃げるようにして、帰って行ってしまったとさ。