日本の民話・とんち話
                                                                                                    
       
3月 3日
一 ふ く ろ の 米 
あるとき、曽呂利さんは、秀吉公にこんなお願いをしました。
   「私の町は、まずしい人が多く、みんな、毎日食べるものに困っています。
   そこで、殿様のおなさけをもちまして、紙袋一ぱいほどの米を分けてやりたいとおもいます。
   どうぞ、お許しくださるよう、お願いいたします。」 こんなことを、
   まじめくさって、ていねいにたのむので、ちょっとへんだなと、
    秀吉公はおもいましたが、「なんじゃ、それっぽっちのことか。つまらんことを聞くな。
 お前のすきなようにせい。「あのう、それが大きなふくろでして・・・。」
  「たかが、紙のふくろじゃ・・・・。すきなだけもたせてやれ。  
  「さすがはおなさけ深いお殿様でございます。町のものもさぞかし喜ぶことでしょう。」
    曽呂利は、ぺこぺこおじぎをし、秀吉公の書き付けをおしいただていて、
   お城をさがりました。それから、10日ほどたったある日のことです。
   「殿様、大変でございます。」 家来が、秀吉公のところへかけつけてきました。
  「いかがいたした。」 「まあ、ちょっと、町のようすを見てください。あ、あれです。」
秀吉公の米倉の中の一つに、それはものすごく大きな紙の袋がすっぽり
かぶさっています。そして大勢の町人が、米倉から、どんどんお米を運び出しているのです。
おどろいた役人が、これを止めようとするとあの曽呂利が、殿様の書き付けを見せて・・・・
  「殿様、あのとうりです。」  「ううむ・・・・・・。」
 「あのぶんですと、かなりたくさんの米が出ていってしまいます。何がなんだかわからず
せっしゃ、みるにみかねて、お知らせにあがりました。」
「ふむ、ふむ、なるほど、こりゃおもしろい。」
「殿様、笑っている場合ではございません。早く止めてくださいますよう。」
  「まあ、よいではないか。」 「しかし、あんなにどっさりのお米を・・・・・。」 
「よいよい。わしもあいつと約束したのだし何かわけがあるに違いない。すてておけ。」
「それにしても、曽呂利のやつ、でっかい袋を作ったもんや。あっはっはっは。」
  つぎの朝、曽呂利がお城にやって来ました。 「殿様、昨日はありがとうございました。」
「はっはっは、すごい袋をつくったもんだの。」 「はは、あれだけで10日ほどもかかりました。」
いただきました米は、荷車で120台もございました。お約束通り、 
町のまずしい人達に、これは、おなさけ深い殿様からのお米だといって、
分けてやりました。みんな、涙をながして喜んでくれました。」
「殿様、曽呂利からも、厚くお礼申し上げます。」 「そっか。それはでかした。さすがは曽呂利じゃ。
まあ、大きかったこと。作るのも、米倉にかぶせるのも、なんぎじゃったろうて。
とんだ紙袋一杯じゃったのう。はっはっは。」 
終わり