日本の民話・笑い話

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10月22日(日)               
茶  栗  柿

              むかし、むかし、あるところに、一人の馬鹿息子がおりました。
いつまでも何もさせないで、遊んでばかりおらせても、仕方がないので、
親は何か物売りでもさせようかと、考えつきました。そこで、ある時のことです。
                                     
茶と栗と柿と麩(ふ)を持たせて、それを売りに出しました。
馬鹿息子はあたたかく気持ちよく晴れた、にぎやかな町へ出かけて行きましたが、
どうもハッキリと大声で売り歩くのがめんどうでしたので、
「ちゃつくりかきふ・・・・・。」といって、ノソノソと歩いてゆきました。
       これを聞いた町の人たちは、みんな誰も
「はーて、なにを売つてるのかいな。なんのこったかわからんわい。」
ひとりとして呼びとめてくれる人は、ありませんでした。馬鹿息子は、
一日じゅう町の中をあちらこちらと歩きまわっても何一つとして
売れませんでしたので
「もう帰るとしようかい。売れんものは仕方あんめえ。」と言って帰って行きました。
さて、息子が帰って来たのを見た親は、さっそく聞いてみました。
「どうじゃつた?どれほどうれたかい?」「いんにゃ、一つも売れんなんだ」
「フーン・・・・・、そりゃおかしいな。そんなはずはねえんだが。」
「でも売れんじゃったもんは、仕方ねえ。「それで、お前は何と言って売ったんだ。」
おら、「ちゃっくりかきふ」って言って売ったつだよ。
「そんなに一緒に、なにもかも言うから、売れんのじゃ。茶は茶で別々。
栗は栗で別々。柿は柿で別々。麩は麩で別々に、振れて売らんからじゃ。
「ああ、そうか、わかった・・・・。」こうして、あくる日になると、
馬鹿息子は町へ行ってこんどは大きな声で   
茶は茶で別々・・。栗は栗で別々・・。と呼んで歩きましたが、町の人たちはこれを聞いて
「おかしな物売りがきたぞ。」と言って、ただ笑っているだけで、やっぱり売れません。
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親も帰って来た息子から、その話を聞いて、ほんとうに呆れ返ってしまい。
「よく言ったもんだ。馬鹿につける薬はないってなあ。」
すると息子はその言葉を聞くと「じゃあ、飲む薬でもいいよ。