これを聞いた町の人たちは、みんな誰も |
「はーて、なにを売つてるのかいな。なんのこったかわからんわい。」と |
ひとりとして呼びとめてくれる人は、ありませんでした。馬鹿息子は、 |
一日じゅう町の中をあちらこちらと歩きまわっても何一つとして |
売れませんでしたので |
1 |
「もう帰るとしようかい。売れんものは仕方あんめえ。」と言って帰って行きました。 |
さて、息子が帰って来たのを見た親は、さっそく聞いてみました。 |
「どうじゃつた?どれほどうれたかい?」「いんにゃ、一つも売れんなんだ」 |
「フーン・・・・・、そりゃおかしいな。そんなはずはねえんだが。」 |
1 |
「でも売れんじゃったもんは、仕方ねえ。」「それで、お前は何と言って売ったんだ。」 |
おら、「ちゃっくりかきふ」って言って売ったつだよ。 |
「そんなに一緒に、なにもかも言うから、売れんのじゃ。茶は茶で別々。 |
栗は栗で別々。柿は柿で別々。麩は麩で別々に、振れて売らんからじゃ。」 |
|
「ああ、そうか、わかった・・・・。」こうして、あくる日になると、 |
馬鹿息子は町へ行ってこんどは大きな声で |
茶は茶で別々・・。栗は栗で別々・・。と呼んで歩きましたが、町の人たちはこれを聞いて |
1「おかしな物売りがきたぞ。」と言って、ただ笑っているだけで、やっぱり売れません。 |
1 |
親も帰って来た息子から、その話を聞いて、ほんとうに呆れ返ってしまい。 |
「よく言ったもんだ。馬鹿につける薬はないってなあ。」 |
すると息子はその言葉を聞くと「じゃあ、飲む薬でもいいよ。 |