日本の民話・笑い話
                                                                                                                    
                                           
11月01日
酒  と  小  便
むかし、むかし、吉四六さんが酒を買って、徳利にさげながら、関所を通りました。
   すると、関所から役人が出て来て
   「これこれ、その方の持っているのは何じゃ。」と聞かれましたので
   「へえ、酒でございますだ。」と言って答えました。これを聞くと役人は、さっそく、
   「うん、さようか。では、一杯飲ませろ.」と言いながら、大きなどんぶりに、
   酒をナミナミとついで、ゴックンゴックンとのみ、
   「たしかに酒じゃ。よし、通れ・・・・。」
   吉四六さんは、仕方なく帰って行きました。しかし、
   これが何としても釋(しゃく)にさわって、がまんができません。そこで考えました。
   「うん、よしよし・・・。ではあの役人をだましてやんべえ」と思って、
   次には徳利の中に小便を入れて、それをさげて関所を通りかかりました。
   思っていた通りに、役人はまた、「これこれその方の持っているのは何じゃ。」
   と、たずねてました。吉四六さんは腹の中で笑いながら
   「へえへえ、小便でごぜいますだよ。」と言って、正直に答えました。
しかし、役人はそんなことは信用しません。吉四六さんが、
「今日のは、本当の小便ですだよ。それでも、ええなら、差し上げますが・・・。」
   と言うのも聞かないで、
   「うん、よしよし・・。その小便が飲みたいのじゃ。さあ、早くこっちへよこせ」
   役人は徳利を取り上げますと、またドンブリにナミナミとついで、
   飲みはじめました。が、こんどうは本当の小便でしたので、
   「ウワーツ・・・。」と叫びながら、ゲロを吐いてしまったんだってさ。
終わり