奈良の昔話

8月25日(土曜日)                                
な な つ ぼ
     
むかし、むかし、のお話です。
 あるところに、二人のこじきがおりました。
ほかほかといい心もちの昼さがり、なにもすることがないこじきは、
山のふもとにゴロリと横になると、仲良く昼ねを始めました。
それからどれくらいたった頃か、一人のこじきが目をさましました。
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「あーあ、よく寝たもんだ。」と両うでを大きく振り上げてのびをしながら、
ひょいと隣を見ますと、もう一人のこじきは、グウグウ高いびきの真っ最中です。
その時、一匹のハチがどこからか飛んできて、眠っているこじきの耳の穴に
スツと入っていきました。「あれっ?」と不思議に思ってみていると、
先ほどのハチが耳の中を出たり入ったりし始めました。こじきはぐっすりと

良く眠っています。 そこで、起きていたこじきが、「おいつ大変だ、ハチがお前の
耳の中に入ったぞ」と大声をあげて眠っているこじきを起こしました。
「うーん、 ハチだって?わしはそんなハチのことなんか知らんぞ。それより、
せっかく人がいい夢を見ているのに、たたき起こしやがって・・・。」
   起こされたこじきは、ブツブツ文句を言い始めました。「その、いい夢つて何だ?」

と起こしたこじきが尋ねますと、「夢の中で、この山のふもとにお宝の一杯つまった
 壺がうめてあるという、ありがたいお告げがあってな。今しもそいつをほり出そうとした時に、
お前さんに起こされちまったというあんばいさ。わしらは、夢の中でも金には
縁がないようだ。」そう言って、起こされた方のこじきは、さっさと出かけてしまいました。
起こしたほうのこじきも、反対の方角へと歩きだしましたが、

しばらく行ったところでこっそりとひき返し、昼寝をしていたあたりを夢中でほり始めました。
すると驚いたことに、本当に小判のびっしりと詰まった壺が出てきました。
「そっか、あの夢のお告げの主は、ハチだったのだなあ。」目の前の凄いお宝をながめながら、
こじきはまるで夢をみているような心地でした。小判の詰まった壺を持ち帰ると、
さっそく大金持ちの暮らしぶりになりましたので、そのこじきの噂は、

あっというまに知れ渡りました。それから暫くして、その噂を耳にしたもう一人のこじきが、
大金持になったこじきのところにやってきて、その訳を聞きますと、大金持のこじきは、
奥の部屋から例の壺を出してきて、正直に全てを話して聞かせました。
訪ねてきたこじきが、その話を聞きながら、壺を眺めたり触ったりしていますと、
壺のの裏に、「七壺のうち」と書いてあるのが目に入りました。そのこじきは、

お宝の壺があと六つはあるとということに違いありません。
すぐさま二人のこじきは、あの昼寝の場所へ出かけ、どんどんどんどん掘っていくと、
まあ、でるわでるわ、小判いっぱいの壺が、六つ見つかりました。
終わり