奈良の昔ばなし


8月10日(金曜日)                
金 を 屁 る ネ コ

むかし、ある田舎に、うつくしい姉と、醜い顔の妹がいました。姉のほうは、
綺麗な顔をじまんにおもっていたので、沢山のもらい手の中でも、一番の長者の
ところへ嫁にいきました。妹のほうは、もらい手もなかったけれど、しんぼう強くて
働き者だったので、びんぼうな炭焼といっしょになりました。正月が近づいて松の枝を
切ってくると、姉のところへ持っていって、「姉さん、門松にこの松の枝を買ってください。」

とたのみました。姉は、妹をかわいそうとも思わず、「門松ならまにあっていますよ。」
とことわりました。妹が泣き泣き歩いているうちに川渕へでたので、「竜神さま、
この門松を差し上げます。」というと、背負ってきた松の枝を渕へほうりこみました。
するとにわかに水面があわだち一匹のカメが、背中にネコをのせて現れました。
「私は竜神さまの使いのものです。門松のお礼にこのネコをあげましょう。」

といって、水底にきえました。妹が、とぼとぼ帰るうしろから、ネコもついてきました。
家へ帰ると、食べさせてやるものもなかったので、妹がため息をついていると、
ネコは、土間で金の糞を屁りました。妹はよろこんで、それを町へ持っていって売りました。
ネコは毎日、金の糞を屁つたので、炭焼は、たちまち長者になりました。
ある日、姉がやってきて、いやがる妹から無理やりネコを借りていくと、

どっさり金の糞を屁らそうとして、どんどん食べさせたので、ネコは死んでしまいました。
姉はおこって間口に捨てましたから、かわいそうに思った妹が、つれて帰って、
裏山にうめると、そこに一本の木が生えて、沢山の金の実がなりました。
終わり