奈良の昔話

8月10日(金曜日)               
長いわらじ

むかし、いじわるなおしゅうとめさんのいる家へ、お嫁さんが来ました、その家には、
まだお嫁にいかない娘がのこっていて、おしゅうとめさんと、お嫁さんの両方に、
あることないこと言いふらすので、皆な、つんつん、けんけんして、家のなかが
おもしろくありませんでした。ある時、お嫁さんが、夜なべに針仕事をしていたら、
おしゅうとめさんが、火鉢のそばにすわって、タバコをすいながら、
「なにかいじわるいってやろ。」と、お嫁さんのほうばっかり見ていました。それで
タバコの灰がひざにおちて、ぶすぶす、くすぶってきたのもしらないでいました。
それを見た娘は、「また、わるさする気だぞ。ひざがくすぶっているのもしらんと。」
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と、くすくす笑って見ていたのです、ご飯を外へばかりこぼしていました。それを
見た家の主人は、「娘は、つげ口ばかりして、二人のなかをますますわるくしているから、
たまに叱られるのもいいわい。」と、やっぱりわ笑って見ていました。
それで手もとがるすになって、ながいながいわらじをあんでしました。「やあ。
私としたことが、どじをしてしまったわい。」と、主人は、頭をかくし、おしゅうとめ
さんは、ひざが熱いのでとびあがるし娘さんは、叱られまいとして、
こぼしたご飯のうえに尻もちをつきました。それを見たお嫁さんは、はしっていって
おしゅうとめさんのひざのくすぶりを消し、むすめさんをしかりました。それから
軽く主人をにらむとながいわらじをもちあげて、「ぷっ」とふきだしてしまいました。
お嫁さんが、あんまりわらうので、その内、おしゅうとめさんも、
娘も、自分たちのしっぱいがおかしくなって、一緒にわらいました。
終わり